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滝沢 都

たきざわ・みやこ

 

1971年長野県生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科美術教育専攻美術研究専修修士課程修了。学部と院で、メゾチント技法による銅版画の制作・研究をする。1998年より沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉の芭蕉布会館で、8年間芭蕉布の制作に携わる。その後石垣島に移り、計14年沖縄に暮らす。2012年、生まれ故郷の長野県上田市真田町に戻り、祖父の残した明治元年築の古家を直し暮らし始める。

喜如嘉時代に栽培し始めた芭蕉の繊維を、年一度「ぬぬぬパナパナ」の展示会に向け、績み織っている。一方で、現在は和棉と藍を栽培し、亜麻の栽培にも取り組んでいる。土地と気候と自らに合う布作りをめざし、模索中。

最近思っていること

亜麻の調べ物をしていると、「もうすでに大量生産が成されているものを、今この極東の地で栽培から手紡ぎ手織りで何故やるのか?」自らに問いかけることがあります。綿も然りです。希少価値のある芭蕉布を織っている時には考えずにいられたことなのですが。

亜麻について考えていると、銅版画のことが頭に浮かびます。ヨーロッパで盛んであったという共通点が、銅版画と亜麻布にあります。もともとメゾチント技法は絵画作品の複製や挿絵や肖像画を作る技術として、イギリスやフランスなどで盛んでした。その後印刷技術の発展や写真の発明により、その役割を終えた技術とした廃れていきました。忘れ去られていたメゾチント技法を再発見したのは、日本人である長谷川潔でした。紙の白からインクの黒までの段階が微細に表現できることがメゾチントの特色なのですが、一番の魅力はその黒です。無数の点を銅板に打ち込むことで作るその黒は、他のどんな新しい技術を使っても表現できない深い奥行きのある黒さだと思います。

忘れ去られていく大変な作業を伴う技術の中には、このようなものが必ず隠されているのだと思っています。私は銅版画からそれを学びました。芭蕉布にももちろんあります。私は常にそういったものに魅力を感じ続けているようです。亜麻は、たまたま長野の涼しい気候に合っているようなので興味を持ったのですが、栽培から布にするまでにはなかなか一筋縄にはいかないようです。だからこそやりがいがあるし、これからが楽しみです。

沖縄を離れて、績むことはできても紡ぐこと(綿も羊毛も)は数年前までやったこともなく、最初は本当にひどい糸を作っていました。未来の私が見たら、今の私もかなり悲惨な物しか作っていないと思います。それでも制作者は、毎日手を動かすことしかないのでしょう。
(2016年2月)

 
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